2010年11月27日土曜日

[AGDC 08#09]月額制か基本料金無料か。オンライン

マット?フィラー氏(左)とジョシュア?ホン氏(右)
 Bethesda Softworksの関連会社,ZeniMax Studios Onlineを率いるMatt Firor(マット?フィラー)氏が,「Subscription vs. Free-to-Play」(月額制か基本料金無料か)というパネルディスカッションに出席した。
 迎え撃つのは,北米で「Global Mu Online」(邦題 ミュー 奇蹟の大地)や「WarRock」などの韓国製オンラインゲームを数多くサービスしているK2 Networkの社長を務める,Joshua Hong(ジョシュア?ホン)氏だ。

 ちなみに,ホン氏が韓国人であることと,扱っているゲームの傾向から間違えられがちだが,K2 Networkは2001年にカリフォルニアで発足したアメリカの会社だ。2007年には「Gamers First」という英語圏/トルコ語圏向けポータルサイトを立ち上げている。

K2 Networkは,サービス中のオンラインゲームをまとめて2007年に「GamersFirst」というポータルをローンチした。最近では欧米産のゲームも扱う,ドイツのACONY Gamesが手がけるFPS「Parabellum」の販売権を獲得した
 討論の口火を切ったのはフィラー氏で,「多くの部分で,私が真実だと思うことを話します」とかなり大人しい口調で始めた。「そもそも月額制は,Ultima Onlineを開発したElectronic Arts(Origin)が,いくら徴収すればいいのか分からずに,ある意味適当に$9.99という値をつけたのが始まりと言われています。それが,やがて“どこまでいけるか”を試すために$14.99となり,定着してしまったのです。最近,MMORPGに大きな盛り上がりがないのは,値段に問題があるのかもしれない」と話し,MMORPGのパブリッシャが持つビジネス戦略の問題点を指摘した。

 ホン氏は,フィラー氏の発言を受けて「業界に入る前から,良いゲームも悪いゲームも同じ値段に設定されていたのに疑問を感じていた。MMORPGやオンラインゲームも同じで,消費者が支払いたいと思う価格にするのが理に適っているはずだ」と答えた。さらに,「月額制のMMORPGをプレイする層がここ10年でほとんど変わっていないのに対し,支払い価格が柔軟な基本料金無料は,より若い層を取り込んでいる。これは,ビジネスとしての将来性を考えるうえで,重要な要素だ」コメントした。

 基本料金無料のほうが将来性があるように聞こえるが,ホン氏によると,「最初の数か月で,アカウント総数の5%から10%がアイテムなどに投資してくれれば良いサービス。それ以下なら長期的な戦略は組めない」と語っており,それなりにシビアな世界なのである。また,子供達がお金を使い過ぎてしまうという問題もあるだろう。

これは,ZeniMax Online Studiosの公式サイトだ。現在,未発表のMMORPGを制作しているが,その内容はまったく明かされていない。ちなみに,Bethesda SoftworksはZeniMax Mediaの傘下であり,ZeniMax Online Studiosとは兄弟分である
 これに対してフィラー氏は,「月額制のゲームは,すべてのプレイヤーがお金を払っており,全員を対等に扱うのが前提だ。一方で,基本料金無料のゲームは,お金をつぎ込んだ特定の人が,より良いサービスを受けられるようになっている。これはゲームとしていかがなものだろう」とコメントした。大勢のプレイヤーが競う要素もあるゲームで,払った金額によってサービスに差がつくというのは,北米の顧客心理に沿うものではないということだろう。
 さらにフィラー氏は,「アメリカでも基本料金無料に需要があるというのは証明された。だが,結局は値段にあったゲームを提供できるかどうかにかかっている」と続けた。

 「Age of Conan: Hyborian Adventures」「The Lord of the Rings Online: Shadows of Angmar」が健闘しているとはいえ,1000万以上の登録者がいる「World of Warcraft」の牙城を崩すゲームはいまだに生まれていない。これに関しては「ビジネスとして,今後もさまざまな試みがMMORPGの中でも行われていくはずだ。World of Warcraft以上の人気を得るゲームは,ここ2?3年のうちに登場してもおかしくない」とフィラー氏はコメント。これまで多くのMMORPGが失敗したのは,「途中で開発資金がなくなったり,延期が許されなくなったから」なのだという。

 フィラー氏が所属するZeniMax Online Studiosは,「The Elder Scrolls IV: Oblivion」で大成したBethesda Softworksにあやかり,その名前を冠したオンラインゲームを開発しているという話がある。
 これが本当だとすれば,パッケージゲームの成功をMMORPGに生かしたBlizzard Entertainmentを模した動きだ。豊かな開発資金をバックに,多くの開発者をつぎ込み,時間をかけて制作されたMMORPGだけが,成功の切符を手にするのかもしれない。

引用元:フリフオンライン(Flyff) 専門情報サイト

2010年11月23日火曜日

EDIの進化──マーケティングへの応用と流通業界横断の情報共有ネットワーク

 一般的に、EDI(Electronic Data Interchange)は受発注や請求処理など、いわゆる“定型業務における事務作業の効率化やコスト削減を可能にする仕組み”というイメージが強いが、それはひと昔前の話だ。

 ITが進化した現在、EDIも使い方によっては問題解決ツールとして機能させることができるようになってきた。なおかつ、裏側にプールされたデータベースと連動することでその機能はさらにアップし、さまざまな分野の問題解決や創造的プランニングへと応用できる。もはやEDIは受発注管理の枠を超え、高度な情報ネットワークへと進化しつつあるのだ。

 特に、問題解決力や創造力が要求されるマーケティングや営業といった非定型業務における活用は顕著であり、今や業務を遂行する上では欠かせないツールとなっている。企画や分析、調整などが中心となる非定型業務では、常に斬新なアイデアが求められる。そのために、担当者はA案、B案、C案と複数の案を練り、どれが最も効果的かと試行錯誤しながら問題解決を図っていくわけである。こうした非定型的業務を効率的に行い、いかに高い効果を上げていくかが、企業成長のカギといっても過言ではないだろう。

 また、非定型業務の効率を上げるためには、情報の共有も必要になる。そのための情報ネットワークとして、流通業界では標準EDIやWebサイトの活用が進み、新たな提案や商品開発へと役立てられている。

●非定型業務の効率化をサポートするツールと情報ネットワーク

 メーカーにとって、自社製品の市場での動きを把握することは、営業戦略上不可欠である。そこで、メーカー?卸売業間のEDIでは、「販売データ」と呼ばれる卸売業の納品実績データがやりとりされており、これを活用して「自社製品がどの卸売業からどの小売店に、どれだけ納品された」という日々の動きを把握しているメーカーも少なくない。

 逆の視点から見れば、自社製品が納入されていない小売店が分かるため、それらに対するアプローチを行うことも可能となる。というのも、メーカーにとって自社製品が小売店の棚に並んでいるかどうかは、非常に重要な事柄だからだ。中でも、機能や品質に大差がない日用品は、店の棚に並んでいることが売り上げを上げるための絶対条件となる。なぜなら、これらの商品は店頭で棚を見て購入するという購買パターンが非常に多いからだ。例えば、洗濯用洗剤を買う場合、消費者としては是が非でもA商品でなければならない理由はなく、店頭になければB商品でも構わないわけである。そういう意味もあり、メーカーではより多くの店舗に自社製品を納入することに力を注いでいるのである。

 販売データとは少し性格が異なるが、似たようなデータとして「POSデータ」がある。POSデータは、「何が」「いつ」「いくらで」「幾つ」売れたかを把握できるデータである。しかし、データ量があまりにも膨大な上に、「どのような属性の消費者が」「何の商品購入後に」「何と一緒に」購入したか、という情報は含まれていないため、顧客の購買動向と商品売り上げとの相関性を分析することは非常に難しい。従って、仮にPOSデータによって顧客の購買動向をある程度推測できたとしても、ターゲットとする層に的確かつ効率的にアプローチできるかどうかは疑問である。

 こうした課題を解決するためのツールとして登場したのが、FSP(Frequent Shoppers Program)データに基づく小売業向けのロイヤルティーマーケティング支援サービスや、メーカー向けの顧客ID付きPOSデータである。

 前者はポイント付与による顧客の囲い込みにとどまらず、会員カードから得られる顧客の購買履歴を詳細に分析し、各小売業の実態に即した販売支援策を提案するサービスをいう。自社導入と比べて低コストで運用でき、分析に費やす時間や人員を削減できるというメリットがある。

 後者は単なる売り上げ情報であるPOSデータとは違い、「誰が」「いつ」「何を」「何の商品購入後に」「何と一緒に」購入したか、という顧客の購買行動と商品売り上げの関係性を把握できる(※)ことが、メリットとなる。

※具体的には、商品の併売状況や、それまで購買してきた商品とは異なる商品を購買し始める「スイッチング」状況などを把握できる。

 一方、情報の共有化という点で優れているのは、小売業に特化した各種グループウェアや、Webサイトを活用して小売?卸?メーカー間で商品、商談、キャンペーン、プロモーションに関する商品情報を共有するサービスなどがある。

 特に今後、メーカー?卸売業?小売業の協働を進める上では、業種を超えた情報共有の場が機能することが重要だ。そのためには、取引先の個人ごとにどのような情報を見せるかを自由に制御できることに加え、複数の取引先が発信する情報を参照するためのユーザー認証が一元管理されているという使い勝手の良さが求められる。取引先ごとに独自のシステムがあって、参照するためのIDやパスワードがそれぞれ必要ということになると、せっかくの場が十分活用されないことになってしまうからだ。

 現在、日用品?化粧品やペットフード?ペット用品、家庭用品などの業界で、各種情報共有サービスを業界規模で有効活用するためのさまざまな試みが続けられている。

●非定型業務の目的は、新たな価値の創造

 以上のような情報源を通じて入手したデータを分析し、それに対するソリューションプランを提案するのが、非定型業務における最大の目的である。そのためには、“気付き”が必要になる。ただし、“気付き”に基づくソリューションプランの中身は、情報を扱う人間により異なる。「キャンペーンを行うべきだ」「値下げすべきだ」「商品デザインを変えた方がよい」など、10人いれば10通りのプランが発生する。定型業務のように一定した結果はあり得ないのである。

 こうした気付きが、新たな価値創造へとつながっていく。これは美しいか、美しくないか、心地よいものであるか、ワクワクするか、面白いか、という価値観は、人間にしか判断できない。また、その判断結果を盛り込めるのが、昔のホストコンピュータとは異なる対話型のインタフェースを持つPCだ 。うまく使えばその人の潜在能力を高めてくれるという二次的効果も期待できる。

 市場環境の厳しい現在、進化したEDIや情報ネットワークを定型業務の効率化だけに活用するのはもったいない。マーケティングの分野においても、積極的な活用を望みたいものである。

引用元:RMT情報局 - RMT 掲示板